もくじ
小銭をゴミ箱に捨てていた彼
いきなりだが、この本に登場する「町いちばんのお金持ちの娘である美少女」から、ずっと忘れていた高校の同級生のことを思い出した。
周囲から尊敬される立場かつお金持ちの父を持つ、高校の同級生だった彼は、いつも数万円ぶんの紙幣を裸でポケットに入れ、「小銭はゴミだから」といって教室のゴミ箱に捨てていた…。
着ているものこそ制服だったが、腕時計や靴、バッグに到るまでブランド品。高いギターを抱えてはバンド友達とつるむ姿は、本人の見た目の良さもあって女子の人気は高かった。いつも、どことなく寂しそうな顔をしていたのもモテに拍車をかけていたように思う。
そんな彼の父親が、悪質な裏稼業をしていたことで逮捕されたのは高校を出てから数年後。
誰もが尊敬していたこの家に対する周りの態度は、ガラリと変わっただろうなと想像がつく。いつも寂しそうだったあの表情、彼はきっと父親のしていることに気づいていたのかもしれない。
そんなことを思い出しながらこの本を読んだ。お金があっても、親の稼業が肩身狭いということは辛いのだ。あの時、彼がいつも満たされない顔をしていた謎が解けた気がする。
終始行間に吹き続ける、爽やかな風
さて「おカネの教室」。話のほとんどは先生と生徒二人の3人だけで展開していく。たった二人の生徒しか入部しなかった「そろばんクラブ」(という名前だが、要は経済について学ぶクラブ)を舞台に、もと凄腕銀行マンが「お金とは何か」について疑問をなげかけていきます。
町一番のお金持ちの子である美少女にほのかな恋心を抱く少年のエピソードが微笑ましく、爽やかな風を感じるような環境の中、クラブの議題は「パチンコ・売春・高利貸しは、果たして、カネを稼ぐ手段として正しいのか?」というアンタッチャブルな側面にも遠慮なく切り込んでいきます。
お金を手に入れる六つの方法として「かせぐ・ぬすむ・もらう・かりる・ふやす」…さて、六番目は果たして何か?という謎を追いながら、ストーリーは進んで行きます。
表紙から勝手に「マンガでわかる」系かと思って手を出しましたが、字だけの本です。ただし、マンガなみに読みやすいです。マンガ化はもちろん、舞台にもなりそう。

「売春や高利貸し…そんなことを中学生に授業として教えるなんて、本の中だからでしょう?」
と思う方もいらっしゃるかも。でも、それは違います。
本書は、経済記者である著者の高井裕章さんが自身の小学生の娘さんのために書いた小説です。
親が子に教える内容としてはなかなか思い切ったものですが、この際、「人間とカネ」を語るうえで避けられない内容に正面から向かい合っているととらえるべきでしょう。
リーマンショックがよくわかった
リーマン・ショックについてとにかくわかりやすく、いろいろな説明を読んでもイマイチ理解できなかった自分には「そういうことか!」と分からせてくれました。
何度も読んだ「信用創造」のくだり
最後のほう、互いに借りたり貸したりしていることでお金が巡っていく「信用創造」のところが、私にはちょっと難しかったですね。何度も読んで、ググッたりしてやっと理解できた気がします。
でもまあ、ここで細かく説明しすぎても流れがおかしくなるし、私のように後半まで読みすすんできた人なら、わからなければ自分で調べるのではないかと思います。
一番刺さったところは…
「知識と情報の裏付けのある直感は恐ろしく正確です」
つまり、「ただのカン」じゃダメってことですね。勉強しなきゃ…。
こんな方に
お金のことを知るとっかかりとしての本を探している方に。中高生にお金のことを知って欲しい方に。
細切れ読書だとすぐに以前の内容がわからなくなることが多い自分ですが、この本は前回のところからすぐに内容に入っていくことができました。
ストーリーと学習内容が頭の中でリンクしているからなのでは?
読みやすいという他に、こういうメリットもストーリー仕立てにはあるのだなと知りました。
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